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Offline - Book-list(2015)

Somewhere which isn’t here.

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2015年5月3日発行/A5/P50/イベント価格:500円/通販取扱:とらのあな様
表紙:サンド

<サンプル>

薄暗い場所に拘束され転がされ、彼はじっと己の中の魔力を生成し、手持ちの武器を増やす作業をしていた。イメージする。何も無い砂漠に、一本、また一本と剣を錬成し、突き刺す。バランスをほんの少し崩しただけで、体内を突き破り剣は内側から彼を壊すだろう。余りにも危うい、綱渡りな作業だった。
けれども幼い頃より、毎晩自殺まがいの鍛錬をしていた彼は、己への危機感というものが薄い。
わざと捕らえられた際に身体中を蹴られた痛みで僅かに発熱していたが、その内に治まるだろうと気にもしない。一般人を装ったのだが、その身体付きで軍人や警官ではないかと疑われ暴行を受けた。けれどもパスポートが見つかった途端、彼は大切な人質になった。
身代金目当てに捕らえられた旅行者達の身は無事だろうか。
その内同じ監禁場所に移されると予想し、それまでは弱ったふりを続けた方が良いと、転がったまま、たまに呻く。人の気配がするたびに、水をくれ、痛い、などと下手くそな英語で訴える。
一度、物好きな男が人質の身体を楽しもうと来たが、暗示をかけて毛布相手に〝楽しんで〟貰った。その後、その男が水や食べ物を差し入れてくれたので、余程良かったのだろう。ありがたくそれを頂戴する。心細そうな表情と声で、一人でいるのが怖いと訴えると、その内皆の所に連れて行くと男は言い、他の奴が彼に酷い事をしないようにするとまで約束して行った。
人質を救出したら。
あの男もたぶん、殺される。
犯罪者を見逃すつもりは無く、拘束、あるいは行動不能にして警察に引き渡すつもりだった。
身代金目当ての誘拐にはこの国はとても厳しく、対外にアピールする為にもすぐに処刑されるだろう。
済まない、と思う。
その命を、救う事が出来なくて。

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